おとり(Decoy)とは、相手の駒(多くの場合は王)を、本来いるべきではない不利なマスへとおびき寄せる戦術です。犠牲(サクリファイス)を伴うことが多く、一見すると駒を損しているように見えても、おびき寄せた後に大きな見返りを得られる場合に成立します。
上のアニメーションでは、白のクイーンがc3からh8へ移動して王手をかけています。これはクイーンを犠牲にする手ですが、黒キングはこの王手を防ぐには取るしかなく、g8からh8へキングを動かして応じます。しかしこれによってキングはまさにおとりに誘われた形になり、次に白のナイトがh4からg6へ移動すると、キングとルークの両方に王手(フォーク)がかかってしまいます。
おとりを成功させるコツは、「相手がその手を拒否できない」状況を作ることです。今回のように王手をかければ、相手には取るか逃げるかの選択肢しかなくなります。特に、逃げ場がなく取らざるを得ない場合は、おとりが最も強力に機能します。
おとりは、王だけでなく、守備の要になっている他の駒(守備駒)に対しても使えます。守備駒をおびき寄せて本来の持ち場から引き離すことで、それまで守られていたマスや駒を一気に攻撃できるようになります。
おとりの戦術は、フォークやディスカバードアタックなど、他の戦術と組み合わせて使われることがほとんどです。「なぜこの駒を犠牲にするのか」という目的を持って読みを進める練習を積むと、実戦で驚くようなコンビネーションを見つけられるようになります。KitsuneChessのパズルストリークでも、おとりを使った詰みや駒得の問題が多数出題されています。